大河×竜児ラブラブ妄想まとめサイト BBS 14052


大河×竜児ラブラブ妄想スレ 避難所

1:まとめ人 :

2009/05/09 (Sat) 11:16:56

ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレの避難所です。
アクセス規制で本スレに書けない、とかスレに書けないような18禁のエロエロ話を投下したい時とかに
お使いください。

    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
  ',     /`l  / , \_/ |
  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
    ',   /`|  u     ヽ
    ', /          /
    /  ̄\   、 -= /                   __
  / ̄\  `ヽ、≧ー                    _  /. : : .`ヽ、
 /__ `ヽ、_  /  、〈 、           /.:冫 ̄`'⌒ヽ `ヽ、 / 〉ヘ
/ ==',∧     ̄ ∧ 、\〉∨|         /.: : :′. : : : : : : : . 「∨ / / ヘ
     ',∧       | >  /│        /: :∧! : : : :∧ : : : : | ヽ ' ∠
      ',∧      |、 \   〉 、_       (: :/ ,ニ、: : :ィ ,ニ=、 : : 〉  ,.イ´
      ',∧      |′   ∨ ///> 、  Ⅵ: '仆〉\| '仆リヽ:|\_|: :|
      / /     |     └<//////> 、 八!`´、'_,、 `´イ. :|////7: !
    /_/       |、       ` </////>、\ ヽ丿  /. : :|//// : .丶
    ,'          |′         ` <//∧ : > </.: : :////〉: : : . ヽ
    ,'          |            / 个:<〉. :〉》《/.: ://///: : : : : : . \
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  ,'            |′           \:ノ. : |: :/Ⅳ/.:〈//////: : : : : : : : : :ノ
  ,'            |            /. : : : :|:///∧ : ∨///: : : : : : : : : . \

まとめサイト
http://tigerxdragon.web.fc2.com/

本スレ
【とらドラ!】大河×竜児【ドキドキ妄想】Vol7
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1241386432/

過去スレ
【とらドラ!】大河×竜児【ラブラブ妄想】(1スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1231122796/
【とらドラ!】大河×竜児【ニヤニヤ妄想】(2スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1234443246/
【とらドラ!】大河×竜児【デレデレ妄想】(3スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1236695653/
【とらドラ!】大河×竜児【イチャイチャ妄想】Vol4
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1237819701/
【とらドラ!】大河×竜児【ベタベタ妄想】Vol5
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1238865504/
【とらドラ!】大河×竜児【スキスキ妄想】Vol6
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1240317270/
2:まとめ人 :

2009/05/09 (Sat) 11:18:19

書き込みテスト
3:まとめ人 :

2009/06/07 (Sun) 17:50:12

つーか、使いづらいので隠し
4:まとめ人 :

2009/06/08 (Mon) 01:12:36

あ、自前でスクリプト組んで掲示板立てたわけではなく、
FC2の掲示板を2ch形式の設定でレンタルしただけです。

トリップとか付けようとしたらトリップ用の文字がそのまま表示されるかもしれないので
書き込むときは気をつけてね!!

5:まとめ人 :

2009/06/13 (Sat) 21:01:21

こっそり掲示板を表に出してみました。

避難所とか言いながらかなり使いづらいですね!

6:手乗り名無し :

2009/06/13 (Sat) 21:49:46

いつもまとめ作業お疲れ様です>まとめ人様

本スレにSSうpしようとしたらocnアク禁に引っかかって涙目。
もーここに投稿しようかと……表に出してもらえて助かったかも。
7:eaLbsriOas :

2009/06/13 (Sat) 22:06:29

手作りトリップ作ってみたw
アク禁で書き込めない本スレに届けこの想い_ノ乙(、ン、)_

大竜に幸せな初夜をあげたくて書いてみました。
ギシアンの手前を丁寧に書いてみたつもり。
シチュはアニメ版のキスシーンからの分岐といったところ。

次から本編投稿します。タイトルは「竜虎並び寝る」
8:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/13 (Sat) 22:09:08


 月の光に蒼く。
 純白のシーツを頭からまとうだけで、大河は竜児の花嫁になる。
 窓から射し込み大河の足元までを照らす、月影のウェディングロード。
 美しくて。美しくて。
 だから竜児はここが、大河との逃避行の末のかりそめの宿、祖父の家の二階だということをほとんど見失う。永遠を、望んでしまう。
「ちょっとだけ……」
 練習ね、と、幻のケープの奥で大河が微笑んでみせる。


  ~竜虎並び寝る~


  1

「もういちど」
 竜児は大河にキスをする。
「もういちど……」
 キスをする。それが答えだから。
「もういちど……」
 ずきん、とする。大河と口づけをするたびに走る、この、甘いくせに、毒のような。
 脳をとろけさせ、腹の芯の知らない臓器を満たし、ふたたび身体の端までかけめぐり、指の先まで甘くする、この、伝わるものは何だ、と竜児は思う。それは稲妻のように強く、だけど蜜のようにしみいる。身体が甘い、そんなことがあることを初めて知る。甘さで気が狂いそうになる、そんなことがあることを。教えてくれたのはこの女だ。俺の初めての女。
 大河。
 涙すら出てくる。
 涙となって出てくる。だから竜児にはわかってしまう。
 大河のふるえる睫毛のはた、降り落ちた月の光をふたたび凝らしたように光る美しい雫に、このいとしい女もまた、竜児と同じ甘美な毒に身体の端まで苛まれているのだと。
 二人とも。だから。
「だっ、だめだ! これ以上はもう……っ!」
 力も溶けて消えかけた両腕にありったけの強い意志をこめて、竜児は大河から身体をもぎはなす。
 踏みとどまる。
 歯をくいしばる。
 自分はどんな顔をしているのだろうと竜児は思う。伏せた目に血を走らせ、涙すら浮かべて、俺はきっとひどい顔だ。こわい顔だ。
 だが知ったことか、とも竜児は思うのだ。俺の顔を見て、誰がこわがろうが知ったことか、と。
 ただ一人、たったひとりでいい。目の前にいるこの女に、大河にだけ伝われば。
 大河にだけわかってもらえれば――それでいい。
 竜児は願う。
 わかってくれ、大河。おまえから唇を、身体を、引き剥がしたのは拒絶じゃない。その逆だ。その逆に、おまえを……だからこそ……大河、わかってくれるな? 大河――そう、竜児が、畏れと、願いとともに顔を上げると、大河は、
「竜児、これあげるわ」
 その小さな手のひらに、小さな箱をのせて差し出していた。きゃ☆、とか言って、もう片方の手は熱くした頬に添えて、大河はこっちを見てさえいなかった。てか目つぶってる。
9:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/13 (Sat) 22:10:32

「おう……な、なんだこれ?」
「プレゼント」
「おう! そ、そうか。まいったな、俺の方はなんにも……て、おまっ!?」
 窓から射し込んでくる清らかな月の光の下に手をひきよせて、竜児が確かめたそれは、
「な、なんでこんなモンを!?」
 どう見てもコンドームです、ありがとうございました。プレゼントだけにありがとう……じゃねえ、って!
「さっき買ってきたの。ほら、下着とか買いにいった時に、一緒に。コンビニで」
「ぜ、ぜんぜん気づかなかったぞ。そうか、おまえがアホみたいに買った菓子の山にまぎれて……じゃねえ! おまえっ、これっ、だから……」
 そして竜児は絶句する。だから、って。だからなんだと言うんだ俺は?
 その、だからをひきついだのは大河だった。
「ん。だから、練習しよ?」
「練習?」
「そう、練習の続き」
「続き?」
「そ、そう。続き、だから……そ、その、だから、ね?」
 わかるでしょ?、なんて言いながら。両手を頬にあてて大河はなにやらクネクネする。
 竜児だって、もちろんそんなの、わかるに決まっている。この状況で、これを、大河が、これなのだ。いくら竜児だって、大河の言いたいことはわかっている。わかってはいるが、それをなんと言えばいいのかはまた別だった。
 わかっているとも大河、それはえがつくものだ……えがつくものだよな? あとせとか? とか言うのかバカか俺は? だいいち、えだろうとせだろうと、そんな言葉、他人に――まして、好きな女になんか、竜児は言ったためしがない。
 しかしこの沈黙をどうとったものか、大河はその、今はまだ世界遺産に指定したいほどにも珍しい、竜児のためだけに向けたはにかみの表情のまま――その愛らしさのままに、瞬間、眉根に苛立ちの小さな雷光を走らせて、
「このグズ鈍感スケベ椅子!」
 ひと息に犬から椅子へ。竜児をとうとうモノにして下さった。
 告白したからといって、婚約したからといって。犬からヒトへと、いきなり昇格できるとは竜児も思ってはいなかった。けれど、ここでまさかの無生物への降格、しかもエロいモノに堕ちてしまうとは……。
 そんな竜児を呆然とさせたのは、しかし、ソープの備品にまで身をやつしたショックなどではなく。
 癇癪をすっとひっこめて、ふたたび上目遣いに恥じらって甘えた声を出す、凶暴な婚約者の豹変ぶり。
「……だから! え、えええ、えっちの練習、しよ?」
「お、おう。だけどそれ……これ使っちゃあ、それはもう練習とは言わねえんじゃねえか……?」
「うるさいわね……いちいち細かいのよあんたは。どうせしたいくせにこのエロ犬」
 めでたく竜児は犬に返り咲いた。
10:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/13 (Sat) 22:13:11


  2

「あっち向いてて」
「おう」
「離れなくていいから……離れないで」
「お、おう……」
 背中に大河の頭があたる。背中に大河の体温を感じる。背中ごしに、大河がパジャマのボタンをはずしていくのを感じる。なぜか湧き出した唾を口の中にためてしまい、竜児は困って、気づかれないようにそろそろと飲み下す。
 大河が小さな尻を突き出して、竜児の太ももにえいっと当ててくる。ふふ、とやつは笑ったかもしれない。唾を飲んだことがバレたのかも。
 そうして大河は脱いだパジャマを、ぽいっと布団のわきに放る。竜児はそれを目で追わずにいられない。後できちんとたたむためだ。そう、たたむためだとも。もちろん。
「いいよ、こっちむいて。竜児」
「おう……」
 返事をしたはいいが、すぐ振り向いていいのだろうか? 振り向くタイミングとかあるのか? 竜児にはわからない。わからないことだらけで、確かなことは、このままではとても心臓がもちそうにないことだけだった。どくんどくんどころじゃない。どどどど、って、おまえ。何か出るのか、出ちまうのか? どどどどどどど。
 鼓動の早さになにやら生命の危機さえおぼえた竜児が、ようやく振り向くのと入れ違い。
「寒い寒い……」
 大河はふとんにくるまって、ちょこんと可愛く頭だけをのぞかせていた。
 うわーっ!と、声には出さず心の中で竜児は叫んだ。心の中の頭を両手でかかえた。俺はなんというもったいないことを! 一糸まとわぬ大河の可愛い身体はどこだ!? ふとんの中ですMOTTAINAI!! ていうかもうこれ、大河の意地悪なんじゃないだろうか?
「なによ、そんな顔して。……MOTTAINAI、とか、思ってる?」
 意地悪な上にエスパーになった大河は、あごをしゃくってふふん、と。なんだろう、すごく見下されている感じがする。寝ているのは大河なのに、立っているのは竜児なのに。下からなのにまっすぐと。
「見たいの?」
 そんな大河は言うこともまっすぐ。
「お、おう……」
「なーんか、気の抜けた返事ねぇ。見たいの? どうなの?」
 おっかねえ。竜児はこわくてたまらない。何がこわいって、大河が不機嫌になることもこわいが、その当然の結果として訪れるだろう中断が、今の竜児にはたまらなくこわい。中断とか、マジで勘弁だ。てかそんなの無理だ。だから、
「見たい」
 と、竜児はつい、うわごとのような声をもらしてしまう。それに気づいて、そしてそれが勇気になる。そうだ、俺は見たい。今こそ言おう、大河の裸がすごく見たい! そうさ、言えるとも。何度でも言ってやるとも! 聞け大河。いや世界中のすべての耳のあるものよ聞け! 俺は大河の裸が見た
「いいよ」
 い、いよ、って。
 何度でも欲望を口にする勇気と決意をかためた竜児の前で。
 見たい、と竜児がもらした、たった一つのかすかな返事にこたえて、大河は頬に紅を散らして。そしてふとんが、
「おう!?」
 ふとんが、ふっとんだ。
11:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/13 (Sat) 22:14:21

 ほんとうに、ふっとんだのだった。竜児の顔の前をかすめるほどに舞い上がったふとんはスローモーション、くたりふわりとしわを寄せてノックアウト、もういちど大河の下半身を隠すようにかぶさる。なんだこれは、大河がふとんに食らわしたのは掌底なのか蹴りなのか……そうじゃない。なんだ下はまだパジャマなのか……そうじゃない。大事なのはふとんじゃないし、パジャマの下でもない。大事なのは――
 幻のようだ、と竜児は思う。
 広がる淡色の髪が作り出した小さな海に、ミルク色の肌を月光に蒼く染めて、けれど頬と耳ばかりは月明かりのなかでもわかるほどに朱に染めて、大河が浮かんでいた。
 浮かんで、そして大河は竜児から目をそらす。
 薄い胸は交差したふるえる小さな両手でいまだ隠され、腰からしたたる雫のような曲線を描く腹は、さらに小さな雫のようなヘソだけをのぞかせてパジャマの下へと消えていく、けれど。
 けれど、なんて、綺麗な。
「なに……なによ? なにか言うことないわけ? なによ、ぼーっと突っ立って……」
 大河は星の散る瞳をついと眇めて竜児に向け、けれどまたすぐにそらしてしまう。
「なにか言うこと……」
 竜児はほんとうに馬鹿になったみたいに、大河の言った言葉を繰り返す。
「そ、そうよ」
「俺、ぼーっと突っ立って……大河、おまえに」
 おまえに見惚れていたよ……と、そう竜児は言ったのだった。そして竜児は、見惚れるという言葉の意味をはじめて本当に知る。気づいて、綺麗だよ、と言えばよかったかと悔やむ。可愛いよ、と言ってあげられればよかったのかと。なんて俺は気が利かない、口が下手でだめなやつなんだ。だから、
「うぐ~っ!」
「おう! た、大河!」
 見ろ、大河が泣き出しちまったじゃないか。寝巻きのポケットにも用意してあるポケットティッシュを取り出して、大河の涙を拭こうと竜児はあわててそばにひざまづく。
「い、痛てて……っ」
「おう! なんだ、そっちか。って痛いのか? どこがだ? 大丈夫か?」
「竜児、髪、踏んでる」
「おうわあ! すまんっっ!」
 竜児のひざが大河の髪を踏んで、にわかにひっぱられて痛かったらしい。竜児はひざをどかし、大河の髪をかきわけて二度と事故が起こらないようにして。
 そしてようやく、うぐうぐ泣いている大河の瞳からこぼれる涙にティッシュをあててやる。右目も左目もあててやり、ついでに鼻もチーンさせる。よかった、それで大河はおちついたみたいだった。
 竜児は努めてやさしい声を出す。
「ごめんな、大河。俺、おまえを泣かせるほど口下手で……」
「竜児……」
「おまえがあんまり綺麗で、可愛くて、驚いちまって、ぼーっとして……だから、そう言えばよかったのに、見惚れてたなんて。だめだな、気の利いたこと、どうにも言えねえ。おまえがいうとおり、俺はバカ犬なのかも……言うべきときに、言うべきことが言えたためしがねえ。今だって、そうだ。泣かしたからあやまってるのに、あやまんなきゃいけねえのに、バカな俺は、おまえの濡れた瞳はなんて素敵なんだ……とか思ってる。あれ? おう? どうした、なんでまた涙がフゴモ……っ!」
 大河は腕を振り上げて瞬殺。竜児の鼻の穴になにかがずぼおと突き刺さる。
「ああああんたまた私を泣かす気かっ! この変態天然ジゴロ犬っ!」
「お、おまえまたなんてことを……おおおおう……っ?!」
 非難もそこそこに、ともかく竜児は鼻の穴に突っ込まれたものをつまんでびろーんとひっぱり出す。そいつの思わぬ長さに痛み混じりの感嘆の声が出てしまう。それはティッシュまるまる一枚、正確にいえば一組(二枚)だった。しかもそれが鼻の片穴から。竜児は驚いて、痛みに涙もぴゅっと。
「まあきたない」
「まあじゃねえ! しかもおまえこれ、さっきおまえが鼻かんだやつじゃないか!?」
「涙も吸ってるんだからいいじゃない」
「まったく何がいいのかわからんぞ俺は」
「嬉しくて泣いたんだもん」
「だから何が嬉しくて……お、う?」
「竜児、私に見惚れてた、って言ってくれたから」
 だから嬉しくて泣いちゃったんだもん……と、大河は照れたようにほほえむ。こぼれ忘れた涙の名残が細めた瞳にいっそうのきらめきを集めて散らす。
12:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/13 (Sat) 22:16:18

  3

 こういう時、自分はどこにいればいいのかが、またわからない。何がエロ犬だ、と竜児は思う。あんなに、数え切れない夜ごと、これはいかがなものかと自分でも心配になるほどに、大河とのことを妄想して、おのれを慰めていたというのに。何も想像できてなかったんじゃねえか、と。
 別にステイを命じられたわけでもないのに、
「なんで正座してるの?」
「お、おう」
 半裸の大河の横に、竜児は正座していた。大河になんでと言われても、自分でもなんでだかさっぱりわからない。正確にいえば、正座からどうすればいいのかが、まったくもってさっぱりだ。
 大河に寄り添うように、横になるといいのだろうか。しかしそうするには、この正座の姿勢からだと、かなりのアクションを起こさないといけない。腰を浮かせて、手をついて、足をおもむろにふとんの方に伸ばし――そうするしかないが、そんな動きがどうにも竜児にはわざとらしく不自然に思えてならない。それではまるで、よっこらせっと、さて、ちょっと横にでもなりますかね、なあ大河さんや……とでもいうようなものではないか。いやいっそ、そう口に出して横になればいいのか? ないない、それはない。
 そんなふうにあれやこれやと悩みながら、大河を見下ろす竜児の凶眼は月光を帯びて、いやさかにスパークする。我は地獄の淫獣アザゼルの化身、へひひひっ、この可愛い娘っこを永遠の性奴へと堕とすべく、さてどう手込めにしてくれようか……とか思っているように見えるが、実際かなりライトに似たようなことを思っている。
 それにしてもこう座って見下ろしていると、竜児にはどうにも大河の裸が眩しくてたまらないのだった。とりあえずとばかり、大河の顔に視線を逃して、
「寒くないか?」
 そう訊ねた竜児はというと、むしろ暑いくらいだった。夜の部屋の空気はわずかに肌寒いほどだが、身体の内からの熱が皮膚をほてらせている。
「うん。平気……」
 大河はそう言うけれど、竜児はストーブのところまで膝歩き、二つ強くする。大河の小さな身体は自分よりも冷えやすいことを知っているから。
 そして戻ってきてまた正座。
 ……しまった、と気づく。今のコレすごいチャンスだったんじゃないか? せっかく腰を上げた状態だったのに、なぜ俺はそこで横にならない!? あやうくリアルに頭をかかえかけた手を下ろし、竜児は、ああそれにしても、どうして……と、じっと手を見る。
 どうしてこんなにも自然であることに苦労しなければいけないんだ、と竜児は思う。虎と竜は並び立つ、それが自然というものじゃなかったのか。だから、なあ大河、並び立つのだから、虎と竜は並び寝るのも自然じゃないか……そうかあ? すげえ聞いたことない。立つが寝るになるだけで、一挙にえらい違いだ。
 そもそも、こんなに悠長に悩んでいる暇など無いはずであった。こんなに不自然な間、いいかげんいつ大河の大河サイズの極小堪忍袋の緒が切れてもおかしくはない――と、竜児が焦りを通り越して本気で怯えかけた、その時。
 まさに虫の知らせか、大河が口を開く。
「見るだけで、いいの?」
 見てすごく興奮してくれるのは嬉しいんだけど……なんて言って、大河は伏せる目蓋も赤くする。いつもの口汚い面罵を予期した竜児はほっとひと安心。おう、そうか。そういうとり方もあるか、ナイス大河、助かった――いや、実際のところ、竜児はすごく興奮してもいるのだけど。
「……触りたいの?」
 おう、とこれは竜児には渡りに船。そう大河に訊ねられれば、竜児はもう間違えない。それならさっきやったからわかるとも。準備万端、覚悟も完了。即座に答えられるぜ聞け大河、お、
「ううん、だめ」
 おおおおおううう……返事すらさせてもらえないとは。
「そんな言い方だから、だめなんだ。私もうしない」
 私も悪かったんだ、うん、もうやめる……などと、大河は天井を見上げてなにやらぶつぶつと。
 そんな、しないなんて、やめるなんて――来てしまった。大河のきまぐれ、わがまま。つまりは竜児がもっともおそれていた中断が。
13:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/13 (Sat) 22:18:46

 竜児の視界は真っ暗になった。きっとギラつく瞳孔は閉店ガラガラ、シャッターが降りたに違いない。あるいは蒸発するマイクロブラックホールのように爆縮、消滅。そうして心に突如広がった暗闇の深淵を竜児はさまよう。どうすればいいんだ……どうすれば。さっきからさりげなく片手で交互におさえて隠している、俺の股間のこのいきりたった手乗りドラゴンもどうすれば。
「なんて顔してんの、あんた」
「おう! だ、だって。だってえ~ン……っ」
「なに変な声出してんのキモい」
 そんな絶望をさらにえぐるようなヒドい言葉とうらはらに。だけど、クスッと、大河は竜児に優しく微笑んでくれるのだ。微笑んで、そうして、大河は竜児に両手をひろげてさしのべる。
「来て、竜児」
 そこにいたのはほんとうの天使。
 嘘か幻かと、つい竜児は目をこすって。
「おう!? いいのか? だって、おまえ今、やめる、って」
「やめる? ああ、うん、やめるよ。竜児を試すような言い方。もういいの、わかったから。私、もう知ってるから」
 竜児が、本当にほんとうに私を求めていること――そう、大河は言うのだ。さしのべられた手と手の向こう、綺麗な顔を真っ赤にして、それでも視線もそらさずまっすぐ竜児を見つめて。
「大河……」
「バカなあんたのことだから、私に何をしたらいけないのか、わかんなくて困ってたんでしょ? 何をしたら私が怒るのか、私が不機嫌になるのか、私が嫌がるのか……ううん、何をしたら、私が、喜ぶのか。わかんなくて、固まってたんでしょ?」
「まいった……そんなことまで、わかるのか?」
 当然でしょ、バカね……と、大河は笑って。それは竜児が愛する笑顔で。だから、竜児はほんとうに安らかな気持ちになる。
「だから、私ももう、触りたい? なんて訊ねたりしない……ね、竜児」
「おう」
「竜児、ね……触って?」
 安らかな気持ちになれたのは一瞬だけだった。こんなことを言われて、安らかでいられる男なんて、興奮しない男なんていようものかと。
 しかしここでもさすがに大河は虎、獲物を追い詰めるのに容赦はないのだ。
「来て、竜児……触って。竜児の、好きにして。私を、竜児の好きにして。私に、竜児のしたいこと、ぜんぶして。私、嫌がらないから。怒ったりしないから。だから私に、私のカラダに、竜児がしたいこと、ぜんぶしてね? 私のぜんぶ、あげるから。私は竜児のものだから。私はぜんぶ、竜児のものだから」
 だから竜児のしたいこと、私のカラダにぜんぶしてね……と。
 大河は、ほんとうに、容赦が、ない。
 くらくらと、竜児はめまいがしそうだった。からだじゅうが熱くなる。とりわけなんだか鼻の奥が熱い。やばい、鼻血を出すんじゃないか、俺は――すると大河はさしのべた手で竜児の手をとって、
「私、あやまらないから」
 そう言って、裸になった自分の胸へと押し付ける。

(3章終わり、4に続く)
14: ◆eaLbsriOas :

2009/06/13 (Sat) 22:23:51

続きも出来てるけれど、とりあえず今夜はここまで。
ギシアン遠いです。
15:まとめ人 :

2009/06/14 (Sun) 11:31:15

+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・) ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +

甘すぎる内容に転がっちまうぜ。
わっふるわっふるひゃっほう!

ところで、この作品はまとめに直接保管しても良いのでしょうか?
私の方で代理投稿しようと思ったのですが、平日は忙しくてできそうも無いので…
16: ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 11:49:56

感想ありがとうございます!>まとめ人さん

本スレと違って?まったくレスがつかないもののようで、
さっきまでしおれてました……投稿しない方がいいのかと_ノ乙(、ン、)_

代理投稿は願ったり叶ったりです。平日はお忙しいとのこと、
無理は申しません。でででもとりあえず3章まででも投稿して
頂ければウレションします。とにかくこの世の楽園本スレの
みんなにも読んでもらえたらと。

とりあえずしばらく毎日1,2章分くらいはうpるつもりなので、
平日分は……勇者の登場を待ったり待たなかったり(´;ω;`)
17: ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 23:03:47

誰か読んでくれてると信じて続きを投下。

続きの4,5章です。次レスから。
18:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 23:05:11


  4

「私、あやまらないから」
「おう。って、な、何をだ?」
「だから、あやまらないから。これが私だから」
 だから、命令するの……と、大河は言うのだ。命令という、その言葉の強さにはとても似つかわしくない、儚くて甘い声音で。
 そうして大河は指先までほてらせた手と手で、竜児の手と手をとって、自分の薄い胸へと導く。その驚くほど柔らかで、小鳥のように熱く、竜児の手のひらに痺れるような初めての快感をもたらす肉を、大河は、これ、と。
「これ……ちいさな胸、好きになって」
「お、おう」
「違うの。私だから……私の胸だから好きになるんじゃあ、だめ」
 すぐさまの返事を用意していた竜児は、しかし、大河のその言葉の意味の見えなさを前に、思わず声を呑むほかない。
 不意を突かれてまぶたをかすかに開いた竜児のために、竜児の心に自分の言葉がすとんと落ちるのを待つように、間を置いてから、
「ちいさな胸が好きなひとになって、竜児」
 大河は薔薇の唇をふるわせて言った。
 手のひらの下、そのちいさな胸の奥に、竜児は大河のちいさな心臓を感じていた。自分よりも早く、きっと強く。その早鐘のような鼓動が竜児にはたまらなく愛しい。
 その血が薔薇の唇を染めるのだと思う。
 その血が大河に語る力を与えるのだと思う。だから。
 竜児は、大河の言葉を決してとりこぼすまいと耳を傾ける。
「私。私、ね。竜児の目が好き……だけど、それは、竜児の目だから好きなんじゃあ、ないの……ううん、初めはそうだったのかもしれない。でも、でもね、今は、その……鋭い、おっかない、目が好き。かっこいい、って、そう思う。だから、それだから、そんな目の竜児が、ずっと、もっと、好き……」
 はっきりと、しっかりと、確かめるように。
 竜児の目だから好きなのではない。竜児が好きだから、そのおまけで、その目が好きなのではない――そう、大河は言うのだった。そうではなく、もう、その目が好きなのだ、と。竜児のその目はもう魅力で、だからいっそう、その目を持つ竜児のことが好きになるのだ、と。
 その目は竜児の魅力なのだ、と。
 だからね、と、大河はふりしぼった勇気で睫毛を震わせて、重ねた手の指先を震わせて言うのだ。だからね、と。
「ちいさな胸が好きなひとになって、竜児。そうして、それだから、もっと、ずっと、そんな私のことを好きになって……」
 だからまた、応える竜児の声がふるい立ったのは。きっと、大河を心から安心させたいという思いのためだけではなくて。
「……おう!」
 竜児は感動していたのだ。
19:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 23:06:28

 大河は、その薄い胸をこそ魅力だと感じて欲しいと願うこの女は、その願いを竜児に伝えるために、そしてそれと一緒に、竜児が自分の目つきに抱き続けてきた苦くて複雑な思いすら、吹き飛ばそうとするかのようだった。まるでついでのようにして。
「おう!」
 この目は魅力なのだと言う。そう言うのは、ほかの誰でもない。自分ですらない。
 大切な女がそう言うのだ。竜児にとってさえ嘘のように、自分よりも大切だと思える、この女が、大河がそう言うのだ。
 だからそれは自分を越えた本当に、真実になる。
「おう!」
 そして竜児は思う。大河、お前は最高だ、と。
 俺はほんとうに、最高の女をつかまえたのだと。
 そんなに何度も返事しなくていいわよ、と大河は言う。嬉しそうに、満足そうに、目を細めてみせる。
「よし、おっぱい触ってよし!」
「おう……てかもう、触ってるぞ……?」
「うう……い、いじってよし……」
「俺もおまえのその、ドジなところが好きだぞ?」
「うるさい。それは直す。いいからあんたはとっととそのエロ犬脳みそで日夜あたためてきたどエロい妄想をぞんぶんに私のカラダにぶちまけるがいい」
「……そのひどい口ぶりも好きだぞ……た、たぶん」
「うるさいってば、だから……あっ」
 手のひらで大河のちいさな胸の先をころがすようにする。すぐに硬くしこったそれは、きっと真珠のようだ。だから竜児はそのままに、もう迷うことなく言う。
「真珠……みたいだな?」
「はっ、ち、違うもん。そ、そんなんじゃないもん……あっ、あっ!」
「あんまり可愛い声出すなよ……俺が溶けちまう」
「か、かかか可愛くなんかないもんっ! はっ、はっ」
 薔薇色の唇から桜色の舌を出して、大河は子犬のようにあえぐ。身をよじる。匂わずにはおれない花のような大河の匂いが立ちのぼり、竜児の脳を痺れさせる。
「だめだね。おまえは可愛い。可愛いよ、大河」
「お、おかしくなるってばっ、そんな……っ」
 長い睫毛を甘い涙に濡らした瞳で、大河はくやしそうに竜児を睨みつける。
「だめだよ。……睨んでたって、もうおまえは可愛い」
 それに、こうしたかったんだ、ずっと……と、竜児は微笑んで、そして言葉をつなぐ。
「ずっとだ、大河……初めておまえと廊下で出逢ったあの時に、俺はおまえを可愛いと思った。その時からずっと……俺は、おまえを、ずっと……ずっと可愛いと思っていた」
 驚いて、大河の瞳が大きく見開かれる。
「……う、嘘っ!」
「ずっと可愛いと思って、でも言うことができなかった」
「う、そっ……」
「だから、いつかこうして……おまえは可愛い、可愛いって言いながら、こうしたいって、思っていたんだ……大河。俺の、したいようにしていいんだろ? 俺の妄想どおりに。だからそうする。これが俺の妄想だ。だから」
 大河、可愛いよ、大河……と、竜児は。
 くうっ、と、大河は白いのどから声をもらす。わずかに開いた唇から、小さく綺麗にならんだ歯を食いしばるのが覗く。身体じゅうを弄られているかのように、身をよじる。くやしくて、必死で毒づこうとする。
「そ、そんなにやさしい顔するなあ……っ」
「俺のこの顔がやさしい顔だなんて、わかるのもおまえだけだよ。大河、手をどけて」
 竜児の手の甲に重ねられた、桜色の爪までもがちいさな大河の手を持ち上げるようにする。
 そこにあるのは、プールでも、まして夢でも、はっきりと見ることが叶わなかった大河の乳と、そして……
「おう……ほら、やっぱり真珠じゃないか」
「……っ! し、知らない……っ!」
 大河は息もたえだえ、こんどは両手で顔をおおい隠す。
20:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 23:09:46

  5

 自由になった手で、竜児は大河の身体を撫でる。
 少し手首を浮かせて、指たちだけで。胸から腹へ、月の光の影に導かれるように。
 可愛らしい雫形のへそを指先でやさしくくじると、吐息よりも早く腰を跳ねさせて大河のカラダが答える。
 それが物であれ布であれ、知る限り竜児の指はすでにそれらを優しく扱うすべを覚えていた。そんな竜児の指がすべりゆくのは、今やこの世で一番大切なもの。
 生きたシルクか、それとも。
「……おまえは何で出来ているんだ? 大河」
 月に蒼く照らされた大河の華奢な肢体は、まるで精緻な人形か塑像のような陰影に包まれていて、しかも指の下で熱く息づいている。
 竜児はこんな美しい生き物を知らなかった。
 シーツから浮いた驚くほど細い腰弓の下にも、そっと手を差し入れる。壊れそうだとおののく。
 大河は喘いで身をよじる。くすぐったいのか、それとも。
 虎だというのに、この大河は子犬みたいに喘ぐと竜児は思う。
「俺はこんな気持ちのいいものを触ったことがない」
「りゅ、竜児だってっ! 竜児の手だっておかしいもんっ!」
 大河の顔は両手で隠されていて、その間から、ちいさくて形の良い鼻と、はっ、はっ、と喘ぐばかりの開かれた唇だけがのぞいている。
「竜児の手だって……気持ちよくて、おかしい……っ」
「おう、そうか……よかった」
 腰から腹へ、そして大河の胸へと、竜児は指をゆっくりと鍵盤をすべらせるようにして戻していく。そのたびに、大河は小さく腰を跳ねさせる。
「そんなにビクビクするなよ」
「か、勝手になるの! 気にすんなスケベっ!」
 そして竜児の指は、大河の胸のちいさなふくらみのはたで止まってしまう。じっくりと見ずにはいられない。
 薄くうすく、ふくらませて仕上げた、二つのミルクのプリンのようだった。
 唇よりも淡い桜色の先端が、そのプリンの上にちょこんとのせられて。そしてそのまわりへと、桜色は儚くしてミルクの色にすっと溶けてゆく。それは神の細工。
 桜色の先端は、片方は真珠のようにつんと丸く、そしてもう片方はまだ――
「なぁ大河。おまえの胸はプリンみたいで……美味しそうだぞ?」
「プリンじゃないっ!」
「食べていいか?」
「食べるなっ!」
「じゃあ舐めるだけ」
「……えーっ」
「キス」
「……っ!」
 淡色の髪からのぞく耳までたっぷり赤くしてから、大河はコクコクとうなずいた。これは……キスならいいってことか?
 広がりうねる大河の髪を踏まないように手をついて、竜児はすっと大河の胸におおいかぶさって。
 薄い唇を少しだけ開いて、唇の肉でふくめるように。
 真珠の方に。
「はあ……っ!」
 大河の腰がひときわ大きく跳ねる。
 竜児は顔を上げて、つい確認してしまう。唾液に濡れてちいさく輝く先端を見て。それは本当に、真珠のような。
「もうひとつの方も、キスするぞ?」
「い、いちいち訊くんじゃないっ! か、勝手にすれば……っ」
「おう」
 だめだ、楽しい。竜児にも大河が自分を質問責めにした気持ちがわかってしまう。
21:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 23:11:13

 竜児はふたたび大河の胸に顔をうずめて。
 今度はもうひとつの方。
「あっ、あっ!」
 すぐには口を離さず、唇ではさむようにして、ちゅ、ちゅ、と吸いたてる。
 唇の間でそれはすぐに硬く勃起して、はさむ唇の圧力にも負けなくなる。
 たまらなくなって、竜児は唇をミルクのあわいまで拡げて吸いたて、舌でもうひとつの真珠の仕上がりを確認する。コロコロと。
「わーっ、舐めてるうっ!」
 わーっ、ってね、おまえ……。
 逃れるように身をよじる大河をつかまえようと、浮かんだ細い腰に左腕をまわして抱きしめる。大河の肌はいつしか汗でしっとりとしていて、竜児の手が好きとばかりに吸い付いてくる。あまった右手で大河の左の乳房を大きくつまむようにする。ぷるぷると。なんだ、やっぱ胸あるんじゃん、大河のやつ。
 大河は足までばたつかせて、ふとんも蹴り殺す勢い。声こそ殺して大騒ぎ。顔を隠すために両手がふさがっていなければ、竜児の身もどうなったことかと。おおこれはなんという虎。
「わーっ、わーっ!」
 それでも押し殺された悲鳴は甘い響きを帯びていて、竜児はたまらなく愛しくなって。
 唇をめいっぱい拡げて、大河のミルクプリンで口の中をいっぱいにするようにして、先を飾る真珠ごと舌で舐めつくす。
「た、食べられちゃう! 食べられちゃうっ!」
 食べねえよ。
「食べないでね? 食べないでね? 竜児……っ」
 おまえが可愛いからいけねえんだ。
 ふと、大河は足をばたつかせるのを止めて、かわりにつっぱるように伸ばす。
 哀願する。
「りゅ、りゅうじっ、はっ、はっ……あのね、もっ、もう……っ、いいでしょ……っ?」
 駄目と答えるかわりに、竜児は今知った大河がいちばん可愛く喘ぐやり方で真珠をくるりと舐める。
「あーっ! も、もういっぱい……っ、いっぱいっ、舐めたよね? いっぱい……いっぱいっ!」
 大河は頭と足で支えるようにして、ひときわ弓なりに腰を浮かせてくる。竜児に乳を吸いたてられて、いっぱいっ、いっぱいっ……と、大河は熱にうかされたようにくり返す。
「あーっ! あーっ! りゅうじっ、ひどいっ、……も、もう、だ、だめだよ……だめ……あーっ!」
 竜児は右手でぷるりとつまんだ、もう片方の真珠も浮かした指でくじりだす。
「だ、だめだってば……っ!!」
 大河の肢体がビクンとひときわ大きく跳ねた。知らない跳ね方。
 玉を結んでいた汗が飛ぶ。全身をつっぱらせる。小さく華奢な大河の身体が竜児の腕の中で驚くほど硬くなる。痙攣する。
 虎が、と竜児は思う。
 大河の顔を覆い隠していた両手がはなれて、何かつかむものを求めるように震えながら空をかく。空に爪を立てる。
 竜児は反射的に顔を上げた。
 甘い涙でぐしょぐしょの大河の瞳は、宙に向けて驚いたかように見開かれて、星を散らして。いや、これは驚いているのだ、大河も。竜児はそう確信する。
 瞳を見開いたまま、大河は竜児が見ていることに気づく。痙攣のさなかで顎を引き、竜児を見ようときらめく瞳孔を動かす。
「りゅ……じ……っ」
 だが痙攣がその瞳を竜児に向けられる前にふたたび虚空へとさらう。
 大河の身体がふたたびひときわ大きく跳ねる。
22:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 23:12:33

 大河が壊れてしまう! 
 そう、ほとんど竜児は恐怖すら覚えて、いまだ安らぐことなく宙へと跳ねようとする大河の腰を力強く抱いて支える。
「……っ! ……っ!」
 空をかく大河の両手が竜児を掴もうと近づいては、肢体を硬くする痙攣にはばまれてとどまる。大河の爪が虚空を引き裂く。
 あれに掴まれた者は引き裂かれる。
 俺を引き裂け! 大河!
 迷わず竜児は心に叫んで、大河の腰から背中に腕を上らせて、胸に胸をあわせるように抱きしめる。こするようにして額に額をくっつける。
 大河の瞳の自由が利かなくなったのなら、俺がそこに飛び込んでやる!
「りゅ、りゅう、じ……っ」
 大河の両腕がガクガクと背にまわされても、竜児の背中に覚悟していた痛みは爆ぜない。その背中を掴もうとする力すら、痙攣が奪っているようだった。
「りゅ、う、じ……」
 襲い来る硬直に抗って、大河は必死に瞳を細めて、嬉しそうに……ほほえもうとして……!
「愛している!」
 竜児は叫ばずにはいられない。
 大河の瞳は見開かれ、目からあふれた涙が頬にひとすじ。
「わ、わた、し……も……あい、し、て……っ!」
 ふたたび大きな痙攣が言葉をさらい、そして大河は瞳を閉じた。
 静かに痙攣する大河の身体。
「……う、嘘だろ……なあ、おい……大河……」
 その痙攣も、収まって。
 なのに大河は瞳を開けない。
 忍び寄って来た焦りが、竜児を捕まえる。
「嘘だろ……なあ、おい、大河……起きろよ……はは……」
 やがてそれは恐慌になる。
「なあ、からかうのはやめてくれよ、大河……嘘だろ……? はは……目を開けてくれよ……大河! 大河っ! たい、がはっ!」
 肺からしぼられる最後の叫びは苦痛の叫び。
 竜児の胴に腕を回して、身体のコントロールを取り戻した大河の渾身のベアハッグが決まっていた。
「うるっさいっ、てば、あんた。大声出すんじゃないっ」
 可愛い唇から罵声を浴びせて、大河は大きな瞳もぱちりと。怒るのも忘れて、竜児はそれはもう安心のあまり。
「おう! た、たいがぁ~ン……っ」
「キモいってのよ、だからその声」
 まさかこの期に及んであんたの新しいキモポイントを発見することになるとは思わなかったわ……なんて、大河は平気でひどいことを言う。そんないつもどおりの罵りに、竜児はますます安心だと喜びを深くしてしまう。染み付いた犬根性? なんとでもいえ。だって、だってなあ?
「だ、だってお前……俺はてっきりお前が死んだかどうかしたのかと」
「いや~すごかったね! 私も死ぬかと思ったわ」
 いや~すごかったすごかった、あはははは……なんて、他人事みたいに笑っている大河を見て、ようやく竜児にも多少の憤りのようなものが、こう、ふつふつと。
23:竜虎並び寝る ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 23:13:55

 なにか一言ってやらねば気がすまない。よし、と決意し口を開いた竜児は、
「怖かったんだぞ……ほんとに」
 唇をとがらせ拗ねていた。
「ごめんごめん☆」
 そんな竜児の怒る気も何も一発で失せてしまう、この素直に転じた大河の卑怯なほどの可愛さ。この虎の新たな牙がこれだ。だめだこいつ、早くなんとかしないと……てか俺がだめなのか?
「だって私も初めてだったんだもん……あんなにすごいの」
「おう……てことは、やっぱりさっきのあれは……あれか? つまりその……」
 イク、とかいう。
 真っ赤になって口ごもる竜児を、大河は目を眇めて見返して。
「竜児またなんかスケベなこと言おうとしてる」
「おう? っておまえの身に起きたことだろ!?」
「……うん、たぶん、そう。私……私ね? たぶん……あれで……」
 今度は大河が真っ赤になる番だった。仲良し信号機か俺たちは。しかし、そうか、つまり、やっぱり。
 つまり、だから、その、やっぱり。
 大河はイったのだ。
 わあ恥ずかしい。
 そんな心の中の言葉に羞恥のあまり身悶える竜児には、しかし、まだいくつかの初心者的というか童貞的な疑問が。
「む、胸、だけで?」
「えっ!? そ、そう。だと、思う、たぶん……あああなんかあんたを殺したい」
「なんで!?」
「だから! 私も初めてだったって言ってるでしょ?」
「初めて……イった?」
「わーもうやっぱあんたぶっ殺すっ!」
「おう!? だから、ベアハッグやめっ! おま、えの、本物……だ、だめへぇっ」
「胸だけでイったのなんか初めてなの! てかあんなにすごいの……初めてなの……っ!」
 竜児の背骨をミシミシと軋ませていた両腕も解いて、大河は恥ずかしさのあまりとうとう俯いてしまう。淡く豊かな髪間からちょこっと覗かせた耳も真っ赤。
 肺に酸素を取り戻した生還者の竜児は、そんな大河の頭をやさしく撫でてやる。ちんまい頭を眺めるそのギラつく邪眼で伝えたい思いは、俺もキリストより齢古い地獄開闢以来の魔神だが、天使のベアハッグで仏が見えそうになったのは初めてだ、そんな天使のつむじに喝をくれてやろう……とかというものでは、もちろんなくて。
 やっぱりどうにも愛しくて。
 だから竜児は愛しい名前を呼んで、
「大河……」
「な、なによ……っ!」
 顔を上げたその娘の唇にキスをする。

(5終わり、6につづく)
24: ◆eaLbsriOas :

2009/06/14 (Sun) 23:19:15

今夜はこんなところで。

本スレへの代理投稿は大歓迎です。でも5はちょっともうアレか……。
3まででもどなたか……(´;ω;`)ウゥ
25:まとめ人 :

2009/06/15 (Mon) 00:19:53

>◆eaLbsriOas氏
とりあえず3までがんばってみました!

って、4以降来てるー!!
連投規制が怖いので他の方にお任せいたしますが……
エロいですよ!エロスは程々じゃないと危険が危ないじゃないッスか!
26:必殺●持ち人#1111 :

2009/06/15 (Mon) 00:35:13

バイバイさるさんもSamba24も無視出来るくせにあんまり投稿しねえあたしが来たなりよ
ステキな作品ありがとうございます
代理投稿やったるで!

ついでにこのBBSでトリップ使えるかどうかテスト

してみたけどだめでしたテヘヘ
27:必殺●持ち人 :

2009/06/15 (Mon) 01:14:53

4,5と代理投稿しておきました
これで眠れる
28: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 01:17:26

>まとめ人様
代理投稿ありがとうございました。・゚・(ノ∀`)・゚・。
スレ仕様でしょうか、丁寧な改行も入れて頂いたようで、
お手数痛み入ります<(_ _)>

保存庫に入れる時はどっちがいいんでしょうか。可能であれば、
この避難所に投稿した版のままで、よろしくお願いします。

>エロいですよ!エロスは程々じゃないと危険が危ないじゃないッスか!
そーなんですよ(ノ∀`) 
なんてか、避難所に続き来てたよ的な告知だけとかのが章によっては
いいかもしれません……。

>必殺●持ち人さん
おお勇者さま……。支援ありがとうございまーす!
代理投稿の申し出もありがとうございます。
ちょい前にエロの是非論でモメたりしてたから、ご無理はなさらないでください。

スレのみなさんから抗議があったら、素直にこちらに篭ってます。
てかそもそもアク禁で篭らざるをえないんですがw

その場合は続編投稿の告知だけ、よろしければお願いいたします。
要はスレのみなさんに読んでいただいて、
贅沢を言えば感想などが欲しいだけなので……。
29:必殺●持ち人 :

2009/06/15 (Mon) 01:20:06

>>16
こっちがレスつかなかったのは隠されていたから

そして俺など書いた作品に誰も感想もねぎらいの言葉もつかなかいんだぜ!
でもまったく気にしない
2chで罵倒批判いちゃもんがつかないのは珍しいことだし
読者が心に抱えていたとしてもわざわざそれを文字にして読ませてくれない方が俺はいいし
何より俺の心の中にある大河と竜児の世界を形に出来る方が楽しいのだ
30: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 01:21:23

>必殺●持ち人
>4,5と代理投稿しておきました
ぎゃあ、ありがとうございます! 勇者さま。
改行までして頂いて、お世話になりました……<(_ _)>
31:必殺●持ち人 :

2009/06/15 (Mon) 01:27:52

ちなみにこのスレッドのURLは
http://tigerxdragon.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=2283473
だぜ
こちらだとレス番号が表示されるのだ

>>28
いわゆる「2ちゃんねらー」な方々や自治厨が沸いて出てくるようなら
そのへんの状況は察して代理投稿は控えようとは思います
まあ文句投稿が出来ないように作品で埋め尽くしちまうって手も考えて
作品ストック考えてはいますがねフフフ

しかしつくづく不思議なスレだと思います
具体的にはほとんど文句言う人がいないんですよ
アニキャラ個別板の他のスレ見ると2ちゃんらしい叩きと煽りの応酬だったりするのに

何より自治厨があまり沸いてこないのがいい!
結局みんな大河と竜児が二人のラブラブな光景が好きだからなのかもしれません
だから感想の陰の側面「辛口批判レス」も自重されるのかもね
32: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 02:12:48

>>31
ご配慮痛み入ります。まずは様子見でしょうか。

本スレはいいスレですよね。とらドラ!のSSリンクとかはまだ無いぽいので、
本スレとかまとめスレがすごく重要な拠点になっていると思います。

感想が……と言っても、私は他の方みたいに深いものは書いてないので、
GJとかそんな気軽な感じのレスに憧れているだけだったり。

最初の投稿後、まとめ人さんのレスがつくまでの間は半日ほど真っ暗な
気分だったのでw、それでも当初からノーリアクションも念頭には入れて
いたので、なにがあろうと毎日ひたすら投稿する覚悟ではいたんですが。

今は必殺●持ち人さんもいらっしゃるし、おかげさまで明日というか
今夜は気分も明るく続きをうpできそうです。本当に感謝してるんだぜ……。
33:通りすがりのななしさん :

2009/06/15 (Mon) 18:39:28

ん?避難所にうpしてから代理に頼むんですかい?
二度手間だからあっちに普通に投下したほうがいいと思うんだが…。
まぁなにかしらの事情があるのかね。とりあえず続きに超期待。全裸待機してる。
34:通りすがりのななしさん :

2009/06/15 (Mon) 20:05:48

アクセス禁止らしいからね。もし解除されればまた考えればいいさ。
というわけで、自分も応援してますよ、頑張って下さい。
35: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:07:46

>>33
ここの最初の方にも書いたんですが、どうもOCNサーバの全面アク禁に
ひっかかってるようです。さすが2ch俺たちに出来ないことを平気で(ry
初めての書き込みすら本スレには出来ないという。閲覧は出来るんですが。

では、次から続きを投下します。6章から。
36: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:10:02

  6

 唇が唇を、ついばみあうようなキス。
「竜児……」
「大河……って、おうっ?」
「うう~っ!」
 大河はいきなりえぐえぐと泣き出したのだからたまらない。なんだなんだ? またやっちまったか俺? ここ、キスするところじゃなかったのか? 認めたくない若さゆえの過ちなのか? 坊やだからなのか? 竜児はあわてふためいてティッシュを出して、
「こわかったんだもんっ、私だってっ!」
「おうっ?!」
 大河はそんな竜児の首に抱きついてきたものだから、これでは涙も拭けやしない。大河の首筋からたち上る香にも似た匂いに、ずっとそこに鼻をうずめていたい欲望にかられながらも、竜児はなんとか大河にかけるべき言葉を探りあてる。
「そ、そうか、ごめんな……おまえもこわかったんだな」
「ちがうのっ!」
 わあもうわけがわからない。
「私があんな……すごくなって。竜児が引いちゃったんじゃないか、って……」
 こわかったの……と、大河の声の最後は消え入りそう。
 なるほどと、ようやく納得できた竜児はつい、苦笑して、
「ばーか」
 言ってやる。竜児の首筋に涙と鼻水を塗りたくっている大河の小さな頭を、正面に引き据えて。汗で張りついた前髪をわざわざよけてやってから、額で額をコツンとしてやる。
 涙で濡れた頬をぷくっとふくらませて、なにやら不服そうに上目遣いに睨んでくる大河の、
「ばかじゃないもん……あっ」
 左目の涙の跡にキスをする。
 右目の涙の跡にキスをする。
 そうして竜児は、ちょっと迷ってから、いちおう言ってみる。
「……なあ、鼻水もキスで拭いていいか?」
「やめてよ変態っ!」
「俺は変態で結構だよ。おまえにしか、しねえし」
 とはいえ当人の意思は尊重して、大河に鼻水だけはティッシュにちーんさせる。ちーんさせながら竜児は語りかける。
「……そりゃ俺だって驚いたさ。死んじまうんじゃないか、なんて一瞬思ったし。でも、べつに身体は大丈夫なんだろ?」
「うん、平気……」
「それで……大河は、その……気持ち、よかったんだろ?」
「う、うん……す、」
 すごく……と、大河はまた消え入りそうな声で。なんで不服そうなんだおまえは。
「愛しくてたまらなくなったよ、俺は」
 はっとして、大河は顔を上げる。
「ひょっとして竜児って、派手にイク娘が好み?」
「は、派手にって、おまえね……」
 派手に、イク。まったく予想だにしない言葉の組み合わせ。だけど、まあ、なるほど、大河のアレを、言い得て妙というか、たんに妙というか……あれ俺なんかちょっと感動的な告白をしたはずなのに、大河はなんか俺の隠された恥ずかしい性的嗜好について訊いてきているような……?
37: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:11:22

「答えて! 竜児は、派手にイク娘が好みなの?」
「おう、そ、そうだな……まあ、ど、どちらかと言えば?」
「煮え切らない男ねあいかわらず……ま、いいわ。引こうが引かれまいが、つきあってもらうから。パンツ脱ごうっと」
 竜児の予想をはるかに越える急展開。これが手乗りタイガー、逢坂大河だ……てかちょっとまておい!
「おう、パ、パンツ?!」
「そこに反応するんだ。まあやらしい男」
 なにぼーっとしてんのよ、しっ、しっ……と、大河は片手をひらひら、本当に犬でも追い払うように竜児を下がらせて。ふたたびふとんを首まですっぽり。
「おう……」
「なによ。まさか目の前で脱ぐと思ったの? ほんとどうしようもないわねこのエロ犬は……」
 などと罵声も快調な大河は、うんしょうんしょとふとんの中でもぞもぞし始めた。
 やがで何かの仕掛けのように、竜児からは遠いほうのふとんの端が持ち上がって、そこから一応は丸められたパジャマが、ぽんと畳の上に転がり出る。これはぜひともたたみ直さねばと竜児の双眸が死兆星のごとく妖しく光る。たぶんその中には、大河の、パパパパンツがががが、とか思っているようで、実際にはやはりその中には大河のパパパパンツがががが……。
「じーっと見るんじゃないよこの目からエロビーム放射メイドっ! それに触ったら殺すからね」
「おうっ!?」
 叱られた。
「ねぇ竜児、そこ」
 と、大河はふとんから右手だけ出して竜児の方を指さす。
「おう、なんだ?」
 俺の背後でも指さしているのかと、首だけまわして振り返ろうとして、
「勃起してる」
「おう、なんだ勃起か。俺の後ろに今のところ勃起は無いよう……いやんっ!?」
 竜児は股間を隠して女体化した。
 大河が指さしていたのは竜児の股間、正確に言えば寝巻きがわりの膝丈短パンをひたすらに盛り上げ続けている、つまりなんというか手乗りドラゴンの方だった。
「見ないでっ」
 いまいち女体化が解けきれてない竜児に、大河は眇めた目つきでニヤニヤと、
「なーにを今さら。さっきからずっと見えてたんだよ、スケベな子だね……」
 隠さなくてもいいじゃないか、クックック……なんて、対抗するかのように声音まで低くしてエロオヤジ化。そういえば、大河を抱き起こしたあたりから、竜児はすっかり股間を隠すのを忘れていたのだった。それにしても、俺が女であいつが男で。ボクたち一体どうなっちゃうんだろう……なんて、竜児は大河との将来に新たな不安を見出しかねない勢いだったのだけれど。
 そんなふうに将来はおろか性別も見失いかけた竜児を、もう一度ちゃんと男に戻してくれるのは、それでもやっぱり大河なのだった。
「やだやだ竜児たら、そんなに勃起させて……私のこと、犯したくてたまらないのね?」
 犯すとか、そんな趣味はないはずの竜児なのに、その言葉に反応して股間はびんっと漲ってしまう。ずっと見ていたくなる恥ずかしそうな大河の可愛い顔が、ずっと聞いていたいその可愛い声がいけないのだ、と竜児は思う。そして、
「来て、竜児……犯して」
 そう、大河に、まっすぐに両手をさしのべられて、まっすぐに求めてこられては、竜児に抗えようはずもないではないか。
 こーいこい、ほれ、苦しゅうない、近う寄れ一休……と、ふとんをめくってぽんぽんと誘う大河は、どうやら今度は足利義満になっていたのだけれど。竜児は思わずにはいられない――
 おまえは追い出される虎の方じゃねえのかと。
38: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:13:21

  7

 頬こそ赤らめている違いはあれど、大河のこの表情を竜児は知っている。ねぇ竜児、私いいもの見つけた!――これはそういう報告をする時の大河の顔。
 で、だ、
「こ、これくらい細ければ大丈夫かも!」
 ふとんの中、竜児の股間を手探りしていた大河が言った一言がこれ。
 細い細い細い細い細い細い……。
 ひっ、と、声にならない息を喉から漏らした竜児の脳裏に渦巻くのはそんなエコー。えもいわれぬショックのあまり古来まれという悲死も間近の竜児は、しかし、意識をブラックアウトさせるぎりぎり手前のところで気がついた。
 俺のが握られている感触が、無い。
「大河おまえ……何を握ってるんだ?」
「何って、やだ。竜児ったらどこまで超々々弩級ドドドドエロ戦艦なの。さすがの私もついていけるか心配だわ……うん、でも、私、ずっとついていくって決めたんだったね……竜児ったら、ほんとにえっちで、ひどいんだから……い、い、いいい言うぞオルァ! 覚悟して聞くがいいっ。わ、私がぁただいま握りましたるわあっ、りりゅりゅ竜児の、ち、ち、ちちち、ちん、ちん、んんん……んんんっ? んちっ?」
 インコちゃんになった大河がいいかげん可哀相だから言ってやる。
「お前の握っているのは高須棒だ」
「あらやだ。竜児の言葉責めってそういうマニアックな方向?」
「言葉責めじゃねえ。事実だ」
 そう言ってから竜児も、ふとんの奥に手を突っ込み、下だけはいてる自分の寝巻きのポケットに。
「えっ、竜児のって外せるの?!」
「外せるかボケ。いいかげんその手を離せ」
 ボケって言ったボケって言ったよフォ、フィアンセに今ボケってこいつ……などと、婚約後も快調な自分の罵倒は棚に上げ、イチゴミルク色の頬をぷくっとをふくらませ薔薇の蕾の唇もつんと突き出し、大河はぶつぶつと不平を漏らしている。
 そんな大河の目の前に、竜児はほれ、とふとんからそれを取り出し、
「高須棒」
 つきつける。誓って淫語などではなく、高須家特製掃除用具の方である。
 大河は大きな瞳も寄り目に、次いでジト……っと眇めて竜児を睨む。
「……なんでこんなもん持ってんのよ」
「おう、まだあるぞ?」
 てか暑ぃな、やっぱ……と竜児はひとりごちして、ふとんから出て身を起こす。ふとんに入っていたのはわずかな間だったのに、大河に裸に剥かれた上半身は汗でべっとり、下の短パンもトランクスごと湿ってなんだか気持ち悪い。それはともかくと竜児はポケットの中身を取り出す。
「これはさっきおまえにちーんさせたティッシュだろ? で、これは絆創膏。部屋でもどこでも傷を作るおまえの特殊能力用のキズパワーパッドだ。で、これがおまえの胃腸薬。三剤併合、夏の海からこのかた欠かせたことはねえ。頭痛薬も当然ある。おまえのアレルギーにはもちろんひっかからないから安心しろ。チーカマ。突然かつ謎のおまえの不機嫌の主原因ハラヘリ能力対策。真空パックで常温携帯も安心、3日たったら取り替えるつもりだが、たいがいその前におまえの胃袋に納まっている。まだあるな、これは……おうっ? どうした大河、なぜ急にしがみつく?」
「ぜんぶ出せ馬鹿」
 ポケットから竜児があれこれ出すさまを、みるみる顔を真っ赤に染め上げながらいまいましそうに睨んでいた大河は、唐突にふとんを跳ねのけて竜児の胸板に顔をうずめるように抱きつく。
39: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:14:58

 大河の背中を流れるように隠す淡色の髪はふんわりと途中で左右に割れて、反って細くくびれたミルク色の腰の向こうには、ちいさいくせに女らしくぷるんと丸くて白い尻まで見えて。竜児の目は吸いついて離せなくなる。なぜか湧き出た強い罪悪感を梃子にして、竜児はなんとか視線を大河の尻からもぎ離し、ごまかしの声も上ずらせて。
「お、俺は汗かいちまったから、かっ、髪が濡れるぞ?」
「ほんと、竜児ったら汗でべたべた。気持ち悪い」
 ほんと、気持ち悪い……と、大事なことなので二回言いましたとでもいうのか、そのくせ大河は竜児の胸板にぺとぺとと頬擦りなんぞしてくる。竜児の見下ろす目にもわかるほどうっとり目蓋を伏せた、その時。
 不意に大河の瞳はかっと見開かれ、獲物を見つけた猛禽の眼になる。なぜまたそこで虎の本性が、とこちらは襲われる草食動物の気持ちになって、嫌な予感を抱いた竜児の見下ろす視線と、見上げる大河のらんらんと輝く瞳がばったり。大河はいらやしく、にやあり、と、
「獲物発見伝っ!」
「おうっ!? まさかそこは駄目ん……っ」
 親友直伝のアホ台詞とともに竜児の乳首をパクリ。ちゅーちゅー吸って、んべろんべろと小さな舌で大河は竜児の乳首を男のプライドごと乱暴に舐めたてる。そしてちゅぽんと音も高らかに口を離した大河は、
「やだやだしょっぱい」
 とまずは味の感想で軽くジャブ。続けざまに、遺憾にも勃起した竜児の乳首を眺めてストレートに一言、
「ほら、やっぱり黒レーズン……」
 そして仕上げはアッパー、見上げて、ニヤリと。
 ほんとうの悪魔がそこにいた。竜児が真珠とか言った仕返しなのだった。どっちが言葉責めが趣味なんだ……呆然と竜児は思う。何? 大河に舐められた俺の感想? ノーコメント。しいて言うなら、くやしい、でも感じちゃ……いねえよ! い、いないんだからねっ!
「ちくしょう……もう可愛いとか言ってやらねえ」
「えーっ!? これでおあいこなんだからいいじゃない」
「もう言わねえ」
「……じゃあいいもん、べつに……竜児ってほんと意地が悪い」
 意地が悪いなのはどっちだよ……と竜児は思わずにはいられないけれど。ぷくっと頬をふくらませて拗ねてみせる大河はやっぱりどうにも可愛い。言ってはやらないが。しかし、そうか。
 竜児に可愛いと言われて、やっぱり大河は嬉しかったのだ。大河の天邪鬼につきあって長い竜児には、そんな反応の裏もいいかげんお見通しで。なによりやっぱり、そのこと自体が竜児には嬉しくてならない。
「……やっぱり駄目。言って」
 そしてこれだ。今や大河はただ天邪鬼一辺倒ではなくて、素直におねだりさえしてくるのだ。これがまたなんとも凶悪に……凶悪だ。
「やめないで。やめちゃ嫌。言って、竜児、言って」
「……可愛いよ、おまえは」
「うん……っ」
 不意に大河は何かに耐えるように目蓋を閉じて、ふるふるっと、二たび三たび、震える。その震えもやがておさまり、そして。
 大河は潤みも新たにした星散る瞳で竜児を見上げる。えへへ、と泣きそうな顔で照れ笑いする。
「おかしいでしょ……? おかしいの、私の身体。竜児に可愛いって言われると、こうなるみたい……身体が勝手に反応しちゃうの。おへその下のあたりが、ずきん、って、なるの。ずきんって、甘くて、切なくて……切ないのに、何度も欲しくって……何度も欲しくなるの。えっちな身体……やんなっちゃう」
 変態さんだよね、これじゃあ、はは……なんて笑って、なのに大河は涙をぽろりとこぼす。
「竜児がいなくなったら、どうなっちゃうんだろ。竜児に可愛がられなくなったら、私、きっと……」
40: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:17:45

「いなくならねえし、可愛がるのもやめねえ」
 馬鹿なことを言って泣いている大河の頭を抱きしめてやる。つむじまで愛しい娘の髪に鼻をうずめて竜児は、馬鹿なことを言ったのは俺じゃないかと悔やむ。やっぱり意地悪だったのは俺の方だと反省する。言ってはいけない残酷な冗談というものがあるのだと、また大河に教えられる。けれど竜児も、自虐をしゃぶって大河を見失うような馬鹿を重ねたりは、もうしないのだ。
「俺こそ、おまえの中毒になっちまいそうだよ、大河。可愛いくせにえっちとか、反則もんだぞ?」
 大河は顔を上げたけれど、そこに律儀なふるふるが来て、竜児にその時の表情を晒してしまったことにも気づかない様子で、
「……ほんとう? 中毒に、なってくれる?」
 哀願してくる。
「おう、てかもう、中毒、かもな」
「……ほんとう?」
 声を低くした大河はなんだか瞳まで眇めて、疑り深い。
「おう、本当だって。婚約者の言うこと、信じられないのか?」
 竜児はキメたつもりだったのだが。
「じゃあ証拠見せて」
「おう? 証拠?」
「これが証拠なんでしょ? 見せて」
 大河は竜児の胸板から身を起こし、下を指差して、これ、と。
「お、う、そ、れ」
 つまり、竜児の股間で布を盛り上げているそれが、これ。
「さっきからもう気になって仕方がないのよ。私がふるふるってしたら、竜児のここ、ぐっ、って、ふくらむの? 持ち上がるの? よくわかんないけどそんな」
 大河よりも顔を真っ赤にした竜児を、まっすぐ見つめて指摘する。
「みみみ見てたのか? て、てか、そうだよ、証拠つかんでんならもういいんじゃ」
「つかんでない。私まだ触ってもいないし」
「いやつかむってそうじゃなくてだから」
「見せて」
 まっすぐなご依頼に絶句した竜児は、
「見せて。婚約者の言うこと、聞けないの?」
 逆に大河にキメられてしまう。
41: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:22:37

  8

 おまえに股間を見せる前に、言っておきたい事がある。かなり微妙な話もするが、俺の本音を聴いて
「……えいりあん?」
 ない。未来の夫婦の危機を避けるための、大事な大事な竜児の股間白宣言も、大河は「まだるっこしいっ」の一言で片付け、竜児の短パンをオルァと下げて、びょんとバネのように鎌首をもたげたそいつとご対面。大河は異星人と第三種接近遭遇するシガニー・ウィーバーになっていた。
「エイリアンじゃねえ」
 剥く時は剥く女、大河の行動にあっけにとられた竜児も、かろうじて事実だけは指摘する。実際のところ、エイリアンは男性器の形をモデルにデザインされたとかで、大河の見立てはわりと正鵠を射ていたのだが、そのことを、今はまだ、竜児も大河も知らない。だけどいつかは、きっと見つけられる。そういうふうになっている、映画の歴史は。
 大河は、おびえるでもなく、嫌がるでもなく、顔色こそ赤く変えたままだけれど、むしろ新しいペットと思わずご対面した子どものような目つきで竜児のナニを眺めている。というか近すぎて、ちょっと寄り目になっている。
 ともあれ無事に相棒を紹介できた、というか剥き出された竜児にしてみれば、ひと安心ではあった。
「まあ、エイリアン、でも。まあいいや、うん。ショックとか、引かれたり、馬鹿にされるなんてよりは、ずっとま……」
「無理」
「し……え? むり?」
「無理無理無理無理無理無理無理っ! 絶対絶対ずぅえええ――――――――っっっ、たいにっ、無理っ! この馬鹿変態洋ピンドスケベ淫獣教室っ! こんなっ! こんなこんなこんなモンであんたっ! ああああんた私を殺す気かあぁああぁ――――――――っっっ!」
 叫ぶ大河は両目もぎゅっとつぶって、淡色の髪もわっさわっさ、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌っ、と首をぶんぶん振りたくる。存分に振りたくった後、大河はぴたりと止まって俯いて固まるのだからまた怖い。
 あああだから俺の股間白宣言を聴いておけ、と。いや聴いてもこれはどうにもならねえのか、と。竜児はまたも目の前が真っ暗。心の世界の車窓から、ひたすら広がる無限の闇を眺める旅人になりかける。今日はナニヲコイビトニメッチャキョヒラレからお送りいたします……なんて落ち着いた声のナレーションまで聞こえてくる。
「……なんて、言うと思った?」
 そんな意地悪大河の声まで聞こえてくる……あれこれリアル? と心のロケ地から現実へと帰ってきた竜児に。
 憎らしいほどの間をおいて顔を上げた大河は、ニヤリと。
 つまりはからかわれたのだった。意地悪な太陽の光で心の闇が追い払われるのが、竜児にはなんだかいまいましい。ああだけど、それなのに、
「おっきい、ね?」
 なんて照れながら言って、ふにゃんとした微笑みにかわる大河の上目遣いに、そんないまいましささえ吹き払われる竜児はいまや恋の奴隷だった。
「おう、そ、そうかな?」
「うん、おっきい……他の男のは知らない、けど……あいつの、しか」
 そう、大河は、最後にさも余計なものという感じで付け足した。
「あいつう!?」
 聞き捨てならないとはまさにこのことよと、竜児の凶眼がくわっと見開かれる。焼く、そのあいつをナニごとソレして焼き尽くし、ついでにこんな世界もアレして焼き尽くし、ただひとり三光の化身である我こそが殺し、焼き、奪い尽くすことを許されているのだと、大河を小脇にかかえて西の果ての至高の山頂から宣言するのだコレ! などと、紫光を猛り放つその双眸はここに来てついにドンピシャで竜児の思いを語りつくす。
42: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:24:08

「やだ竜児、あれよ、その、バ……お父さん。子どものころ、お風呂で」
「おう、そうか俺ちょっとお前の親父を殺してくる」
「もう、りゅーじっ、たら!」
 もちろんそれは冗談で。冗談の冗談みたいなもので。
 本当に許すことはまだ出来ないとしても、それを冗談にすることはもう許せていて。
 そんなちょっぴり危うい賭けも二人でなら乗り越えられたのだから、今も二人はクスクスと笑いあえるのだった。
 そして竜児は自分のものに視線を落として、話を戻す。
「……そうだなあ、俺も、他のやつのは、この状態のは。比べあったことなんかねえし」
「そうだよね……あったら、いかがなものか、だもんね」
 比べあったらどういかがなのかはさておき。つまり大河の言うおっきいは、他の男のと比べた相対評価ではなくて。きっと、むしろ、大河の……。
「おっきいね……うん、竜児の」
 しげしげとそれを眺める大河の不思議と穏やかな視線が、愛情あるものであって欲しいと竜児は思う。とはいえ小柄で華奢な大河、頭も身体も小さな大河は、たぶんきっとそこも小さいはずで、だからやっぱり厳しいのではないか……などとも思い至って、竜児は複雑な気分になる。中断ということも、考えに入れるべきではないのか。
「裂けちゃうかも、私」
「おう、それは……やっぱり、今日は」
「あ、すごい。ちょっと小さくなったみたい。ふうん、デリケートなんだ……ウチの駄犬とは大違い」
「うるせえよ……って、え、ちょ、ちょっと待て。おまえ、口をすぼめて、なにする気だあひゃっ」
 大河は薔薇の唇を蕾のようにすぼめて、ふーっ、ふーっ、と竜児のそれに息を吹きかけてくるのだからたまらない。竜児も変な声を出してしまう。
「ちょっ、おまえっ、はおっ、ひっ、火を起こすんじゃ、ねえんっ、んっ、だからっ」
 しかし結局、やっぱりそれはある意味、火起こし、ではあった。
「あ、おっきくなったよ? ほら、竜児、ぐっ、ぐっ、って」
 なんて大河も嬉々として報告する。そして目蓋を伏せて、
「へえ、おっきくなると嬉しいんだ、私。不思議なものよね」
 独り言めいたことを言う。
「嬉しい、のか?」
「うん、嬉しい……竜児は、ふーっ、ってされると、気持ちいい?」
「おう? うん、まあ、たぶん……」
「ぐっぐっ、って、おっきくなると気持ちいい?」
「あーそれはだな……まあ、気持ちいいというか、切ないというか……」
「そっか、切なかったりもするんだ。なんかわかる、気がする。うん、まあ、でもわかったかも。竜児が気持ちいいから私も嬉しいんだね、きっと」
「大河……」
「やめないよ、私」
 大河はまぶしいほどにまっすぐに見つめてくる。
「だから竜児もやめるなんて言わないで。最後までして。ね、竜児……私にこれ、ちゃんとハメて。最後まで……して」
 ちいさな耳まで真っ赤にして、薔薇の唇をふるわせながら言いきる。大河の言葉に竜児は脳天まで痺れてしまう。
「……あっ、また、ぐぐってなった。やらしいったらないわ」
「やらしいって、おまえね……おまえのせいだぞ」
「私、裂けてもいい。竜児だったら」
 その言葉の怖さがそのまま愛になってあふれかえる。竜児はまた胸がいっぱいになって、その名を吐かずにはいられない。
「た、大河……」
「でもやっぱり裂けるのは嫌よね」
「た、大河……どっちなんだ?」
「竜児だって、嫌でしょ?」
「おう! そりゃもちろん」
 おまえが傷つくなんて嫌に決まってる。それが心だろうと身体だろうと。それは竜児のほんとうだった。
「だから拡げてね?」
43: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:25:53

「おう! ……って、拡げ、る?」
「うん、拡げるの、竜児が」
「拡がる……のか?」
「らしいよ? じゃなきゃ……まあ、いいや。拡げて?」
「ひ、拡げるったって、何で……へぶっ!ぷおっ!」
 何か使えそうなものはないかと部屋の中を見回す竜児の頬に、大河は往復ビンタを見舞っていた。竜児は思わず涙目して頬を押さえる。
「なぜ二回……」
「馬鹿っ……指で拡げてよ、竜児の」
「おう、指って、この指でか?」
「その指に決まってるでしょ……あっ、ちょっと、や……っ!」
 目の前に差し出された竜児の指を見て、大河の身体が不意に跳ねる。薄い胸を両腕で抱えるようにして、困ったように眉根をひそめて瞳も眇め、ぶるっ、ぶるっ、と震える。
「りゅ、りゅうじの、すけべっ。こんな、私見て、興奮して、る、でしょ。ぐぐっ、って、おっきく、して……はあっ、やばい、目閉じよ……」
 いま襲ってきたら許さないからね……なんて言って、大河は目をつぶって、痙攣がおさまるのを待つ。口も閉じて、ふっ、ふっ、と鼻だけで喘ぎを漏らす。
 おまえ可愛いすぎるぞ……と、大河の様子を見ていた竜児はつい、そう呟きかけてあわてて自分の口を手でおさえる。ここに可愛いとか言うのは、追い打ちもいいところではないか。
 やがて震えもおさまったところで、大河が発した第一声は、
「というわけですよ」
 なぜか慇懃無礼に丁寧だった。
「おう……な、何がだ?」
「まあ、やられっぱなしなわけですよ」
「うん……うん?……うん」
「きっと私、竜児に拡げられてるうちに、もう駄目になると思うのね……そこでうなずくな」
 駄目になると思う、のあたりでつい竜児の股間がうなずくように反応してしまったのを、大河が叱る。叱るどころか、
「おう、すまん・んんんんんんんん――――っっっ!?」
 大河はいきなりそれを握っていた。
「ねえこれ触ってもいい?」
「しっかり握ってから言うなっ……おう……っ」
 返事をした竜児はもう必死だった。というのも、
「痛い?」
「い、いや、痛く、ない……その逆、だ」
 大河の右手に握られた竜児のそこからすさまじい快感が生じて、尾骨から脳天へとそれがひっきりなしに走りぬけるのだ。どうしてこんなに自分の手とは違うのかと竜児は驚きながらも、まともに目を開けているのも辛い。歯を食いしばらなければキモい喘ぎ声が出そうだった。
「その逆……じゃあ、気持ちいいんだ」
 大河が竜児の顔を覗き込む、ほほえむように瞳を細めたその表情は、いたずらを楽しんでいるようでもあり、そしてなにより、まだあまり見たことがないような優しさにも満ちていて。それがいっそう、たまらない恥ずかしさを催させて、つい竜児は目をそむけてしまう。
「竜児……可愛い」
「馬鹿っ、可愛くなんか、ねえっ! クソっ、仕返しなんか、しやがって……っ」
「仕返しなんかじゃないもん! ……ねぇ竜児、気持ちいい?」
 そう言って大河は、握ってゆるめてを繰り返してくる。
「うわっ、そんな……気持ちいい、ってか、すごいんだよ……大河、おまえの手、なんなんだ……クソっ」
 こらえきれず、竜児はとうとう目をぎゅっとつぶってしまう。
「私の手? 手は私、わりと普通だと思うんだけど……ちっちゃいけど……ねぇ、竜児?」
「な、なんだ、よ……っ」
「竜児の腰、くいくいしてる」
44: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:27:43

「嘘っ!?」
 叫んで、竜児は目を開けて、愚かなことに自分の腰を見下ろして確認しようとする。当然、意識された腰は止まっていて、初めから動いてなかったかのようにしか見えない。
「やめちゃ駄目っ」
「動かして、たのか? 俺、腰」
 つい訊ねてみたものの、大河は真剣な面差し。とても辱めとも嘘とも思えない。しかし無意識に腰を使っていたなんて、そのこと自体が恥ずかしすぎた。竜児は血ものぼせて顔を熱くする。
「意識してなかったんだね」
「ああ、たぶん、勝手に……」
「ん。私も、そうだったもん。……馬鹿だな、私」
 言わなきゃよかった……と、声も消沈させて大河は悔いていた。しょんぼりと。
「気持ちいいと、腰が勝手にそうなるんでしょ? 竜児が気持ちいいの、私、とめちゃった……」
「そんな顔するな」
 恥ずかしさなんて、吹き飛んでいた。沈んだ大河をどうにかしたくて、ミルク色の頬を撫でてやる。親指で眉根を撫でて、悔いのひそみを消してやる。笑っておくれと微笑んで、頬に添えた手で導いてキスをする。大河が瞳を閉じる。
 もう一度キスをする。薔薇の蕾の唇を唇でついばむ。蕾はほぐれて、薄い小さな花びらのようになる。愛しくてまたついばむ。大河は瞳を閉じたまま、長い睫毛を美しく震わせている。
 そうしてそっと唇を離して、竜児は大河が瞳を開けるのを待つ。
 上手く出来ただろうか、と竜児は思う。キスなんて上手くなくたって、かまわなかった。ただ大河の笑顔が欲しいと、そう思う。大河は頬も桜色に、ゆっくりと瞳を開けて。
 竜児を見つけて、そして大河は微笑んでくれた。
 報われる。俺はおまえの喜びのために上手であればいい、と竜児は思う。大河の上手にさえ、俺はなれればいい。
 そして微笑んだ大河は、こうも言ってくれるのだ。
「竜児のキス、大好き……」
「おう……嬉しいよ、大河」
「ね、もういちど……」
 ねだる大河が瞳を閉じて備える前に、竜児はその唇にキスをする。大河が瞳を閉じるのを見て、今度は竜児も目蓋を閉じる。可愛いよ、と唇をついばむ。
 唇を逢わせたまま、大河の唇にそっと舌先をあてる。ふっ、と大河は可愛く鼻から興奮の息をもらす。唇の花弁がわずかに開いて、大河のちいさな舌が竜児の舌を迎えてくれる。高鳴る心臓が竜児の舌を震わせる。
 胸の真珠にしたように、大河の舌先をくるりと舐めてやる。大河の舌は逃げない。その手が竜児の性器をきつく握ってきて、快感が爆ぜて竜児の尾骨が震えてしまう。大河の可愛い舌を唇で吸いたてて、自分の舌にのせるようにして口の中に招き入れる。ちいさな舌を一生懸命に伸ばして大河が喘ぐ。
 大河の髪にくしけずるように指を入れて、細くて熱いうなじを抱き寄せる。大河の甘い舌を吸う。口の天井と舌で包むようにしてやる。境い目が溶けて消えた唇と唇の間で、大河の舌の裏側を舐め上げる。おまえの性器もこうして吸うんだよ、と竜児は思う。おまえの性器もこうして舐めるんだよ、と竜児は思う。応えるかのように大河は腰を跳ねさせる。
 竜児はそっと腰を使いだす。大河の手をおのれの性器で犯す。おまえの性器もこうして犯すんだよ、と竜児は思う。意識が快感を支配する。竜児は舌先を硬くして、大河のちいさな口に突き入れる。硬くした自分の舌を大河にしゃぶらせる。舌を伸ばして何度も突き入れる。おまえの性器もこうして犯すんだよ、と竜児は思う。
45: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:29:14

「ふっ! ふっ!」
 ほら、きっと大河にも伝わっている。可愛い鼻息も荒くして、可愛く腰を何度も跳ねさせて。
「くうん……っ」
 虎なのに、子犬のように鳴く。とうとう口を離すように開けて、大河はわずかな隙間で喘ぐ。竜児はまだ大河のうなじを抱いて離さない。唇が触れるか触れないかのところで、竜児は大河の伸ばした舌を下から舐めあげる。大河は舌を嬲られるまま喘いで声を出す。
「はっ、はっ、えう……ら、らめ。らめぇ……っ」
 竜児は目を開けて、そしてようやく大河のうなじを解放してやる。離れ際に大河の舌先を舌先で舐める。わずかに開いた大河の薔薇の唇から、桜色の舌がのぞいたまま、震えて取り残される。
 大河は瞳を開けると、少し驚いたように目を見開いて竜児を見つめる。その瞳のはたからは甘い涙をぽろぽろとこぼして。大河は喘ぐことも、跳ねる腰もまだ止めることができない。
「ふうっ、ふうっ、りゅ、りゅうじ、ひどい……えっち……っ」
 きっ、と睨もうとするけれど、喘ぎに口を結ぶこともできない。
「そんなやさしい顔、したって、だめ、なんだから……私の、こうして舐めるぞ、って……私の、こうして犯すぞ、って……はあっ……竜児の、へんたいっ、えっちっ、スケベ犬……っ!」
 責めて、竜児を見つめるのにも疲れたのか、とうとう大河は震えながら俯いてしまう。
 そんな大河の様子を見て、さすがに竜児も反省しないではいられない。愛しさのあまりしたことだけれど、ちょっとやりすぎだったかと。その時。
「キラン……」
 俯いたまま、大河がつぶやく。嫌い? いや、きらん? きらん、てなんだと竜児は思う。なんだか嫌な予感がする。はたして大河は、
「真・獲物発見伝」
「わあちょっと待てそこはあほおぉおおぉぉん…………っっっ!」
 すっと獣の動きで身を伏せると、握った持ち手も変えて竜児のナニの先っぽに――
 ちゅううううううっ……っっっ!――強烈過ぎるキスをくれた。てかなんか吸われた……先に俺の性器が吸われたんだよ、と竜児は涙目で思う。
「ねぇ竜児っ、ここの先っぽなんか透明な蜜みたいの出てるの! キスしていい?」
「だから吸いきった後に訊くんじゃねえ!」

(この章おわり、9章につづく)
46: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:40:29

今夜はここまでで。代理投稿の方、お世話になります。
スレ投稿に慣れたみなさんの改行センスを信じております<(_ _)>

しまった、名前欄にタイトル入れるの忘れてた……_ノ乙(、ン、)_
当然「竜虎並び寝る」の続きです。

>>34
ありがとうございます。励みになります。・゚・(ノ∀`)・゚・。
47: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 20:43:44

もちろん代理投稿でなく、告知だけでも助かります。
おまかせいたします……。
48:必殺●持ち人 :

2009/06/15 (Mon) 20:48:34

キテター
これからいろいろとなにやらしてくる

>>46-47
おぅ
49:必殺●持ち人 :

2009/06/15 (Mon) 21:39:45

本日分投下してきました
編集してる際に読むんですが、今夜もなかなかの出来栄え
なんつーか初々しい二人がいいねぇ
50: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 22:00:21

>>49
ありがとうございまーす! 改行のお手数も痛み入ります。
改行版を読むのは私にとっても新鮮です。充分満足しております。

感想もありがとうございます(゚∀゚)ええ、初々しい二人が奇跡を起こす物語ですw

よろしかったら代理投稿の際に、元はまとめサイトの避難所にある旨も、
添えてやって頂けるとありがたく……<(_ _)>
51: ◆eaLbsriOas :

2009/06/15 (Mon) 22:54:06

>>33
>とりあえず続きに超期待。全裸待機してる。

あはーん。アク禁事情の説明ばかりしてお礼忘れてた。
ありがとうございまーす!

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